6月27日、Defense of dissertation(最終公開審査会)が催され、首尾よく合格。Diploma(学位:Ir.= MSc.)も授与され、修了となった。5回の審査会、2年間の留学。マラソンのようなロードだった。呼吸も落ち着きを戻したところで、Defenseを振りかえりつつ、その評価やオランダでの学位(Ir.)について記してみる。



先ず、評価から。結論からいうと、「8.0」のmarkを戴いた。オランダでは10段階評価を敷衍していて、8.0以上は、通常10-15%のstudentsしか与えられないと聞く。「8.5」のhonorable mentionまで、「半歩」届かずに終わったけれど(実際は8.2。roundされ8.0)、アフリカというchallengingかつ未知のフィールドに踏み込んだこと、4人のジャッジの多彩かつインターナショナルなバックグランドなどを考えると(ブラジル、ペルー、オランダ、ドイツからの4人)、この結果はacceptable、といったところか。ちなみに僕のstudio、「Global Metropolises in Transformation」は、今年12人中10人をfinal(2人延長。共にダッチ)、3人のhonorable mention、2人の8.0を輩出する好成績を収めた。こうしたコンペティティブな環境は、今にして思うと、良好な結果を導くエンジンだったのだろう。

学位について記すと、このMaster of Science。オランダでは「Ir. (Ingenieur)」と訳される。発音から分かるように、「エンジニア」である。中身はともかく、このタイトルが品格をもって扱われているヨーロッパ大陸国の社会・文化的な習慣にはculture shockを受けた。その証拠に、オランダでは、名刺に必ずこの「Ir.」が付記されている。たとえれば、Ir. Bumba Takeとなる。日本ではちょっと考えられない。誰も名刺に「修士(工学)」と付記する人はいない。Ph.d.がさらに授与されれば、Dr.Ir. Bumba Takeとなり、プロフェッサーに昇進すれば、Prof.Dr.Ir. Bumba Takeとなる。常についてまわるタイトル、それが「Ir.」なのである。でも、こうした5回の審査会を敷衍するシステムや、卒業後に国家公認のregistered architect / urbanistのタイトルが付与されるヨーロッパ大陸国の姿勢などを踏まえると、どうやら「修士」といっても、国や地域が変われば、その品格は様々のようである。昨今のボローニャ宣言によるアメリカのような「BSc / MSc」の導入による異論が未だに払拭できていないのは、こうしたヨーロッパ大陸国の教育システムと観念が、アメリカのそれと同一視できないところから来ている。学位授与の所作も、日本と真逆で、集団の卒業式の中で授与されるのではなく、一人のプレゼンが終わった直後に、一人に対して一つの場が与えられ行われる。Diplomaも、僕が署名しなければならない欄が大学のBoard of Examinerの署名の隣りに設けられている。この「署名する瞬間」が、人生においてmemorableな時間であるらしく、皆、この瞬間にシャッターを切りまくる。positiveな意味において、異文化体験をさせてくれた。

さて、Defenseはというと、30分間のプレゼン、15分間の質疑応答、そして30分間の結果・評価プロセスの報告、学位授与という構成。僕のpptプレゼンは90枚あまり。発表時間は正確に30分間に仕切られているので、各スライドについて、シンプルかつクリアーなコメントが要求されていた。タイトルは「Pedal City: Alternative Urban System of Mobility and Accessibility to Urban Services for Self-orgaizing Economici Activiities in Slums of Lusaka, Zambia」。要点は、「爆発的に都市化とスラム化がパラレルに加速していく発展途上国アフリカはザンビアの首都ルサカにおいて、いかにして、スラム人口の大部分を占有する女性と若者の自発的な社会・経済活動を推進するための都市機能へのモビリティとアクセシビリティを発展させるか」というもの。socio-spatialに統合されたurban designが最終案として求められた。ザンビアの首都ルサカは、「dual city / fragmented city」の典型として知られる。南北を貫く鉄道を挟んで、高所得者と都市機能が集中する東部と、スラム化とインフラの未整備な荒廃した環境が加速する西部といった、空間的にも社会的にも強度なコントラストを保有した大都市でのurban designである。70%もの市民がスラムに居住しており、その大部分が女性と若者。昨今では、海外の政府や企業・団体からの寄付に依存する開発の限界が指摘されてるなか、いかにして、貧困層が自ら立ち上がれるような手立てを打つか。これは横断的・学際的なテーマとして、国連を始め、様々な機関が従事している深刻な地球規模のテーマの一つである。とはいうものの、高だか修了設計。トピックのスケールダウンを身の丈に応じて行い、あるスラム地域に限定した都市機能へのモビリティとアクセシビリティを高める代替案としてのurban systemを中心テーマに据えた。詳細はまたの機会にて補足するけれど、昨年の春のセメスターにおいて参加したアフリカのfield tripをたたき台として、今年一年間、5回の審査会を経て推進させた。

とにもかくにも終わってみると、何事もそうなのだけれど、あっけなく、そして、あっという間である。仲間との祝杯・抱擁のひとときも束の間。1週間後には卒業式。そして、皆、未来の扉へむかい、世界へ散っていく。